2022年6月13日月曜日

終活のすすめ23回 大切な人・ものを失うということ      ~『グリーフ』を知る~


社会福祉士(エンディングソーシャルワーカー)

終活カウンセラー 上級    川上 恵美子

 


   支えあいが必要なときだからこそ今回は「グリーフ」についてお話させて頂きます。

「グリーフ」とは思いのままに、気持ちや感じていることを表に出せず、心に蓋をして抑え込んでしまっている状態をいいます。

英語で「grief(グリーフ)」といい、日本語では主に「悲嘆」と訳されています。例えば、誰か自分にとって大切な人をなくしたり、大事なものを失うことで生まれてくる反応や感情、プロセスのことです。グリーフは「死別による悲嘆」とされることが多い言葉ですが、そうした経験ばかりではありません。この度被災された方々だけでなく、その様子を目の当たりにしている皆さんもきっと何かしらのグリーフを経験しているのではないかと思います。

皆さんと一緒に、グリーフは特別なことではないこと、それがわかることでお互いが自然と支えあえる世の中になることを知って頂く機会になればと思います。

①「人物」の喪失

(家族や大切な人との死別・離別、失恋、離婚、親離れ・子離れ)

②「所有物」の喪失

(ペットの死、大切にしていた物の紛失・損傷、地位、能力、財力)

③「環境」の喪失

(引っ越し、転校、故郷、学校、職場、好きな場所、生活様式の変化)

④「身体の一部」の喪失

(失明、失聴、脱毛、身体機能の低下、身体の損傷・切断)

⑤「目標や夢」の喪失

(自分や家族の目標・夢、自己イメージ、理想や誇り)

皆さんにも何か経験があるはずです。「喪失」で抱く感情は悲しみばかりではなく後悔・怒り・無感動・無気力など、一人ひとり感じ方が違えば、その時々によっても生じるものは異なります。またグリーフは心だけでなく身体的・社会的・スピリチュアル的にも大きな影響があります。

☆感情への影響

(悲しみ 怒り 安堵 後悔 無感動 絶望感 無気力 等)

☆身体への影響

(睡眠 食欲減 食べ過ぎ 頭痛 胃痛 めまい 倦怠感)

☆人間関係への影響

(不登校 人間関係の悪化 孤立感 孤独感 過活動)

☆人生への影響

(神仏への不信感 生きている意味の模索 等)

こうした状態が続くと「自分はおかしくなったのだろうか」「何故自分だけが」などと不安になるものです。しかし、これは誰にでも自然に起こりうる反応です。私たちにできることは、グリーフの状態を知ることで、相手の状況を理解し、相手の話をしっかり聴く姿勢が取れ、「あなたは、おかしくなったわけでないから大丈夫」とその人を支えることができます。「いつでも話を聴いてくれる人がいる」と思ってもらえる安全で安心な環境作りも、社会に必要なサポートなのです。