2023年7月27日木曜日

終活のすすめ29回 「彼との出会い」

 

社会福祉士(エンディングソーシャルワーカー)

  終活カウンセラー 上級         

          川上 恵美子




「自分の葬儀を考えたい」。40代の男性から電話があったのは、私が葬儀の仕事をはじめたばかりの2年目の夏。余命宣告を受けていつどうなるか分からないという。葬儀の話ではなく、先ずは、彼の歩んだ人生、思いなどたくさんの話を聞かせてもらいました。

「なぜ葬儀の準備をしたいのか」と問うと、「家族にきちんとお別れできなかったと後悔してほしくない」そして「最期に大切なみんなにも会いたい」との答えだった。彼には、妻と中学生の子供、そしてたくさんの友人がいました。私は、家族で話す場をつくるよう依頼し、後日、夫妻からお互いの気持ちや考えを聞きました。

「これからを大切にしたいからこそ亡くなったときのことを考えたい」という彼に対し、「亡くなることを考えると怖くてたまらないので何も考えたくない」と妻。お互いが、今まで話し合うことを避けていた思いや考えを言葉にすることができました。その後は、家族ぐるみで彼の友人に会い、今後について話す時間も自然と増えたということでした。

葬儀は、彼と出会った半年後、執り行われました。参列した皆さんは彼から余命のことなども知らされていて、家族と友人たちとの話は夜通し続きました。彼の思いを受け止め共有する場があること、お葬式の場で新しいつながりが生まれていました。

後日、彼が残したエンディングノートと家族宛ての手紙を拝見しました。そこには素敵な思いがつづられていました。書かれた日付ことに字体が違います。日々体調も気持ちも変化していたようでした。「主人がこんなことを言ってくれるのは初めてです」と、妻は少し照れながら嬉しそうでした。

最期に家族や友人とともに「死」に向き合った彼。その生き方は、周りの人にさまざまなことを教えてくれました。彼のお陰で、遺された家族には沢山のサポートができました。自分ができないことを友人や仲間にきっと託したのだと思います。

「周りの人への感謝の気持ちを忘れず生きてほしい」

息子さんに何度も何度も語り遺した言葉。

エンディングノートへ書かれた言葉。

「葬儀は全て川上さんに任せています」

この言葉に責任をもって、私はこれからも葬送の仕事(志事)と向き合いたい。

終活のすすめ28回 コロナ禍で改めて葬儀の意義を考える

 


社会福祉士(エンディングソーシャルワーカー)

  終活カウンセラー 上級         

          川上 恵美子


「無事に母を見送ることができました。ありがとうございます。」

今まで以上に、我々葬儀社にとっても心に響く言葉と感じました。

新型コロナウイルス拡大防止の影響を受け、ここ数カ月で私たちの日常は大きく変化しました。それは、大切な人との最期のお別れである「お葬式」にも大きな影響を及ぼしています。

3月下旬に愛媛県で葬儀に参列していた方が感染した報道により、葬儀参列への自粛が一気に広がり、今までに類をみない小規模化が岡山でも加速しました。

テレビの報道で有名人の方のご家族が「入院中の面会はもちろん、最期の対面、火葬の立ち合いも叶わず、お骨になってからの対面しかできなかった」という現状に全国民が衝撃を受けたと思います。

岡山でもコロナの感染拡大予防のため、病院や施設での面会制限により「最期に付き添ってあげられなかった」「会いたい人にあわせてあげられなかった」「ありがとうと直接言えなかった」などと後悔の声を多数聞きました。

葬儀においても参列の自粛により、ご高齢の方や県外からのご家族・御親族の参列を控えて「大切な人との最期のお別れができない」という現状が続きました。

「葬儀には、大切な方が亡くなったということを受け入れ、悲しみとの折り合いをつけていく」重要な役割があると思います。

コロナ禍の中で、大切な人をきちんと見送ることが、決して当たり前なことではないと実感されている方も多いのではないでしょうか。

ご家族としても、我々葬儀のお手伝いをさせて頂く葬儀社としても、「葬儀ができる」ことへの感謝と大切さを改めて考えさせてもらう経験となりました。

「生きている」ことへの感謝と、「生かしてくれている」大切な人への感謝を込めて毎日を笑顔で顔晴って(がんばって)いきましょう!!