終活カウンセラー 川上 恵美子
「自分の葬儀を考えたい」。
40代の男性から電話があったのは一昨年の夏のこと。
余命宣告を受けていつどうなるか分からないという。
彼の歩んだ人生、思いなどたくさんの話を聞かせてもらった。
「なぜ葬儀の準備をしたいのか」と問うと、
「家族にきちんとお別れできなかったと後悔してほしくない」
との答えだった。
彼には妻と中学生の子供、そしてたくさんの友人がいた。
私は家族で話す場をつくるよう依頼し、後日、夫妻からお互いの気持ちや考えを聞いた。
「これからを大切にしたいからこそ亡くなったときのことを考えたい」という彼に対し、「亡くなることを考えると怖くてたまらない」と妻。
この日、今までお互いが話し合うことを避けていた思いや考えを言葉にすることができた。
その後は、家族ぐるみで彼の友人に会い、今後について話す時間も自然と増えたということだった。
葬儀は昨年1月執り行われた。
参列した皆さんは彼から余命のことなども知らされていて、家族との話は夜通し続いた。
彼の思いを受け止め共有することで新しいつながりが生まれていた。
後日、彼が残したエンディングノートと家族宛ての手紙を読ませてもらった。
書かれた日付ごとに字体が違う。
日々体調も気持ちも変化していたようだ。
そこには彼の素直な思いがつづられていた。
「主人がこんなことを言ってくれるのは初めてです」と、妻は少し照れながら嬉しそうだった。
最期に家族や友人とともに「死」に向き合った彼。
その生き方は周りの人にさまざまなことを教えてくれた。
「感謝の気持ちを忘れず生きてほしい」。私も彼のこの言葉を大切に生きていきたいと思っている。
次回は「孫活(まごかつ)の必要性」をお伝えします。