「終活」のすすめ⑬
「岡山のお葬式事情① ~新しい人生の始まり~」
終活カウンセラー 川上 恵美子
「私にこの仕事ができるのだろうか」
旅行会社で添乗員をしていた私が、結婚を機に家業の葬儀社で働くことになり、
人の「死」とどう向き合えばいいのか悩む日が続いた。
「お葬式」をしたいと思ってしている人はいない。
むしろ「死」を避けて通れるものであればと考えるのが普通だろう。
働き始めて間もないころ、「川上さん、本当にありがとう。これからもよろしくね」と
声をかけてくれた80代の奥様がいた。
葬儀の知識も経験も全くなかった私の手を何度も握ってくれた。
その時私にできたことは奥様からご主人との思い出話をうかがう事だけ。
「川上さん、主人の顔を見てくれる。とてもいい顔してるでしょう。
話を聞いてくれて本当にありがとう」とご主人様を見つめる奥様の笑顔が今でも忘れられない。
葬儀後に訪問すると、「私のときは子供たちに迷惑かけたくない。何か準備をした方がいいかしら」
と相談されたので、私は家族の皆さんに集まってもらうことを提案した。
家族会議というのも仰々しいので、葬儀について意見や感想を聞きたいと私から持ちかけた。
話題は、ご主人の最期を通じての反省や後悔など 互いに話しにくい、
聞きにくいと思っていたことにも及んだが、皆さんが笑顔で話す姿がとても印象に残っている。
「元気なときから自分と向き合うこと」で、より自分らしい死を本人だけでなく、
家族も迎えることができる。
そのためには、考えや思いを大切な人と共有する場をつくることが一番大切なのだと分かった。
「終活」とは「自分と大切な家族への愛情表現」だと思う。
ご家族の話をじっくり聴いてその橋渡しをしたい。
これが終活カウンセラーとしての人生の始まりである。
次回は「岡山のお葬式事情②」をお届けします。