「田賀屋狂言会」を立ち上げた
島田(田賀屋)夙生さん(69才)
二〇〇五年(平成17年)退職
2015.10.28 自宅訪問(野田雄一郎)
10月28日、別府啓介さん(平成19年退職)と笠岡市西大島の島田さんのお宅を訪問しました。
10年ほど前、「グループホームみたけ」を開設したと聞きおじゃまして以来です。
今回訪問すると、隣に小規模多機能型居宅介護事業所「あんしん多機能ホーム」が増設されて
いました。両ホームとも、長男ご夫婦で運営されているそうです。
[野田]
今日は、スペインに一緒に行かれた別府さんに同行してもらいました。
島田さんは、県庁に入ってから狂言を始められたそうですが、そのきっかけを教えて下さい。
[島田]
狂言をやろうという気持ちは全くありませんでした。私は25歳の時に県庁に入りました。
29歳、住宅課にいた時に、黒住隆さんに誘われて謡を習いました。
発表会に出ている時、ある人から、あんたは狂言に向いていると言われ、岡山に出稽古に
来られていた12世茂山千五郎(人間国宝四世千作)さんに入門しました。34歳の時です。
狂言は私からやろうと思って始めたわけではないのですが、誘われて出会った先生が偉大な人でした。
狂言「棒しばり」 |
[野田]
ところで「田賀屋」を名乗られておられますが、その経緯を教えて下さい。
[島田]
平成元年に43歳で師匠の勧めでプロになりました。
プロ登録をして(公社)能楽協会に入会しました。そうするとギャラをもらうようになりました。
そこで、我が家に代々伝わる屋号をステージ名として名乗ることにしました。
本家が造酒屋で、分家がそれぞれ屋号を名乗っていました。
1810年ごろの分家で、もともと田賀屋という屋号で、私が6代目です。
平成2年に師範披露狂言会を県立美術館ホールでやりました。
それ以降は、田賀屋狂言会として発表会をしてきました。
[別府]
お弟子さんもおられると聞いていますが。
[島田]
最初に岡山に教室を開きましたが、高齢者の人ばかりでした。
平成7年頃から若い弟子ができました。
岡山市北公民館で、平均20人(延べ100人)ほどを教えてきました。
今は倉敷と玉野にも教室を持っています。現在、弟子は30人ほどです。
[野田]
次男さんが狂言をされていると聞きましたが。
[島田]
島田洋海(ひろみ)です。13世千五郎の内弟子となり、先年修行を終えました。
私とともに茂山千五郎一門の一員として活動しています。
[別府]
いろんなところに行かれており大変お忙しいと思いますが、特にトレーニングはされてるんですか。
[島田]
私は稽古が嫌いです。お弟子さんに教える。学校で教える。
自分でしてみせて、習わせる。これが私の稽古です。稽古のための稽古はしません。
小・中学校に教えに行っていますが、大きな口を開けて声を出すように指導しますと、
1時間もすると大きな声が出るようになります。
今年は、真庭市の6校と、笠岡市の4校、さらに岡山県文化連盟の依頼で毎年10校ほど出前講座に
行っています。文化庁の事業にも2校行きました。
神鳴(かみなり) |
[野田]
毎日忙しくされていますね。
[島田]
予定の入っていない週はありません。
先日は鳥取公演に行ってきました。9月には京都公演にも行きました。
[野田]
私たち後輩に対して何か伝えたいことはありませんか。
[島田]
特にありません。思うままにやられたらいいと思います。
[野田]
何かモットーはお持ちですか。
[島田]
モットーの無いのがモットーです。
人間は目標を持たないと、人を引っ張っていけません。
狂言は、自分の会を作って、自分でやることができます。
自分が主役をすることができる、狂言の良いところです。装束や面もほとんど買い揃えています。
[別府]
ところで狂言はいつまで続けられるんですか。
[島田]
狂言は、私のライフ・ワークです。声が出る限り、身体が動く限り続けていこうと思っています。
※島田さんは海外公演を6回開催されています。
4月23日の退職者会総会後に海外公演のエピソードをお話ししていただくことになりました。
アイルランド公演チラシ |
ブラジル公演チラシ |
ジャパンフェスティバル |
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2016年公演情報
1月2日(土)11:30~12:30 新春祝賀狂言(後楽園能舞台)
福の神(田賀屋) ワンコイン奉納(要入園料)
後楽園で採れたもち米で作った紅白餅が振る舞われます
1月28日(木)18:30~ 新春狂言福来たる(岡山市民会館)
靭猿ほか、野村萬斎、茂山千五郎 5,600円
3月2日(水)10:30~12:00 後楽園開園記念狂言(後楽園能舞台)
新作狂言「シーボルト(仮称)」「千鳥」「盆山」「腰祈」
入場無料来観歓迎
3月26日(土)13:30~15:00 はやしま狂言会(早島町ゆるびの舎)
狂言ワークショップ+狂言「蚊相撲」「棒しばり」
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狂言師 田賀屋夙生の履歴(抄)
岡山県笠岡市出身 1946年生まれ
1971年 横浜国立大学経済学部卒業
現在、社団法人能楽協会会員、能楽大蔵流狂言方師範
【芸歴(修行歴)】
1980年 大蔵流狂言・四世茂山千作師(人間国宝)に師事
1989年 (公社)能楽協会会員、大蔵流狂言師範となる 田賀屋狂言会を主宰
1990年 師範披露狂言会で 重習「三番三(さんばそう)」を披(ひら)く
1996年 秘曲「釣狐(つりぎつね)」を披く
1996年から毎年1回自主公演「稀曲大曲を観る会」を開催
2006年 秘曲「花子(はなご)」を披く
【海外公演】
2002年 アイルランド(ダブリン、ゴールウエイ)公演(国際交流基金助成事業)
2007年 3月オーストラリア・タスマニア公演、6月スペイン3都市公演( 同上 )
2012年 7月ブラジル サンパウロ公演(国際交流基金主催事業)
【講師歴等】
93年から05年まで岡山県芸術祭賞(現・岡山芸術文化賞)の選考委員を勤める
2001年 岡山大学文学部(演劇学特講)の非常勤講師を勤める
【受賞歴】
2002年 福武文化奨励賞受賞
2008年 岡山芸術文化賞<功労賞>受賞
2011年 笠岡市文化の日記念表彰(旧笠岡市文化賞)受賞